なおみ庵

老いも若きも忘れるのである

ずいぶん前に読んだ、よしもとばななさんの「人生の旅をゆく」の
最初にある「ピラミッドが見ている」は、名文だと思う。

そのあとの文もとてもよくて、「これは私の読書歴の中でベスト10に入る!」と
入れ込むほど好きになるのに、今、ピラミッドのことしか覚えていない。

でも、だいたいばななさんの本は読んだ後、「すばらしい!
これはベスト10入りだ!」ってたいがい思うのに、
内容をほとんど覚えていない。ただその読後感だけが残る。

まだうら若き私でさえ、こんななのだ。


母が「じいさん(父のこと)、古新聞や段ボールを縛って
(古紙回収に)出してって言ってるのに、段ボールをハサミで切って
ゴミ袋に入れてるのよ!3週間ほど前にも同じことをしてるのに、
忘れて何をするかわからないわ!回収してることもわかってないわ」って
怒ってたけど。

私は「そりゃ無理もないよ~」って言った。

月に1度か、2度くらいしかしないこと、それも長年してきたことでもない、
興味があることでもない、それを高齢の父が覚えてるわけないと思う。

母は「怒らないでおこうって思うんだけどねぇ」って笑ってたけど。

こういう話を聞いたり、高齢者を見たりすると、
つい「年を取るってイヤだなあ」って思ってしまう。

身体も思うように動かなくなって、忘れてばかりになって、
不潔になって、周りに迷惑がられて、
あー私は死ぬまで元気で、あとはぽっくり逝くのが理想だ、
なんて思っていた。

ヒロシとも時々そんな話をしていて、自分のお葬式で掛ける曲選びまで
やったことがある。

だけど、その一方で、「長生きはそんなに悪なのか?」っていう
疑問も少しはあった。


アメリカでは親族が集まってパーティをしたりして、
食事をするとき、まず、みんなおじいさん、おばあさんら年上の人の話を
聞いたりするのが大事なことだと聞いた。
そのときは、小さな子どもたちも静かに耳を傾けるらしい。

日本では逆だ。
小さい孫が中心で、子どもの一挙一動に大人が大騒ぎしている。
ずっとそんなんじゃ、子どもはおじいちゃんやおばあちゃんのこと
尊敬する対象にはならないよね。

そんなことを考えていたとき、五木寛之さんの「人間の覚悟」を読んだ。

「老いというのは、廃物になっていくような感覚が今の若い人にはみられる傾向があるが、
それは果たしてよいことなのでしょうか。」

「老いた人にとっての時間と、若い人の時間とではまったく意味も
スピードも違う。それを教えてくれるのが、老人の生きている姿です。」

「ぼけ老人の行動を周囲が理解できないのは、ふつうの常識で考えるからです。
人間はみなそういうものだと考え、老いていく人たちを尊敬をもって
おだやかにゆっくり見守る」

それができるのが、成熟した社会で、決して高齢者を切り捨ててはいけないと
書いてあった。

ぼけて寝たきりの人をケアすることは、「菩薩行」であるそうです。

母が父への苛立ちを抑えることもひとつの菩薩行ではないかと思った。

「身体的、頭脳的にもぼけが進行し、過去と現在の記憶が入り混じって、
周囲との関係が保てない状態になっていくとしても、
その人間はダメになったのではなく、人間の始原のふるさとへ帰りつつあると
思ってはどうでしょうか。
老いることを無残に衰えてだめになっていく過程と見るのではなく、
煩悩をどんどん振り払って、純粋化していく過程と見たいものです。」

これは、うなってしまった。
私もどこかで、老いていくのは、ましてやボケるのはダメになることっていう
感覚があったから。

その意識だけでも塗り替えていこうと思う。


じゅんこちゃんの読書家の旦那さまが「やっぱり本は向こうから
現れてくるもののようである」と書かれていたけど、
今回の「人間の覚悟」は、私にタイムリーにやってきた本だった!と思うけど、
この内容はいつまで私の頭に残っているんだろう。。。。

Comment

No title

こんにちは^^
よしもとばななさんの本は若い頃よく読んでいて
懐かしくて思わずコメントしちゃいました 笑
一番記憶に残ってるのは定番だけど「つぐみ」と「キッチン」かな~
最近は雑誌ばかりだったので、また活字が読みたくなりました。

「人間の覚悟」は深そうですね。
私の祖母も最後は痴呆症で亡くなり、自分の両親も段々と「老い」の段階
になってきたので勉強になりそうです。
今度探してみます!

2011.02.01(Tue) 08:54       ぴこmama さん   #-  URL       

ぴこmamaさんへ

こんにちは~^^

ばななさん、懐かしい名前でしたか♪
「つぐみ」と「キッチン」良かったですよね~。
あれは若いうちに読んでおきたいなあ。

五木寛之さんは初めて読んだのですが、
このくらいの年代の方の本をよく読むようになったなあと
自分の年を実感しています(笑)

2011.02.01(Tue) 19:16       なおみ さん   #-  URL       

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